
短編小説っていうのは、読みやすいですね。物語が短いですから。
短いからドンドン読み進んでしまいますよね。でもね、短編小説にはギュッと詰まっているものがあります。そこを掘り出して人生をよくするための学びを汲み取ろうっていうのが、本稿の意図です。
今回は、田辺聖子さんの短編集で、角川文庫から出てます「ほどらいの恋」という本の中の「篝火草の窓(シクラメンの窓)」をご紹介します。「篝火草の窓」は他の出版社からも出ていますので、ググって見てください。
この本、ほどらいの恋→ちょうどよい加減 だそうです。私は「ほどほどの」という理解をしておりますが。中年以降の恋、老年の恋、そんなんがテーマになっています。私は62歳ですから、タイムリーな本ですね。
この物語から学べるもの
- 人生を大転換するための行動がわかる
- 行動をする時の注意点がわかる
- 爽やかさのある人づきあいができるようになる

① 学ぶべき内容 |
アラシックスから人生を変えようとお思うなら、こういった行動をしたらいいのだ、お節介な行動や自分なりの親切な行動をすることで、よりよい方向に、大きく運命が変わる。あるいは動き出す。人生の終わりのほうであっても転機が訪れるということ |
② 学ぶべき内容 |
アラシックスになったら、ようやく人間的な完成が訪れるのだということがわかる。物語の中では、人情の諸訳がわかる。と書いてあり、大人としての落ち着いた男女のつきあい方の作法が理解できる |
③ 学ぶべき内容 |
人間は基本的にしゃべることを欲しているのがわかる。会話したり、一人でしゃべったり。全般的に流れるテーマとして、人とのかかわりの中で人生が動き出すということがわかる。 |
ザックリどんな話かと言いますと、主人公は68歳の男性と64歳の女性。この二人の出会いからはじまります。女性は定年後に大阪ミナミのブティックで働いてます。男性は難波の知人の会社で働いていて、エンジニアのようです。
とある沿線の駅に近いスピードを落とすカーブのところにある民家のある一軒、平屋建ての出窓に花の植木鉢が見えるんですね。68歳の男性が毎日通勤の時に見ていたんですね。
窓辺に冬から春はシクラメン、夏から秋はベゴニアかゼラニウム。どれも赤い花だったんです。
女性の名は瑠璃さん。とある日曜日、お母さんの法事から帰ってきたら、初老の男が家のインターホンを鳴らしていたんです。
後ろから声をかけたところ、その男性、片腕に白いシクラメンの鉢を持っていたんです。
男性は塚田といい、自分は毎日の通勤におたくの窓の花を眺めて心たのしんでいた者だという。ここ1週間ほど窓に花が見えなかったので、どうされたのかと思った。今まで赤い花ばかりだったので、白い花もどうかと思って、お節介とは知りながら持ってきたというのです。
ま、プレゼントですな。

それがきっかけで二人がちょくちょくあって食事するようになる。
そこから先はぜひ本を買って読んでみてください。おもしろい展開になりますよ。そこからの学びもあります。
この塚田さんという男性は、通勤の電車の中から見える、沿線上の家並みからシクラメンのある家を毎日見ていたのでしょう。そしてそれが毎日あったのに、しばらく何にもなくなったので、自ら買いに行って、しかもわざわざ色の違うものを。そしてさらに、どんな方がお住まいなのかもお構いなしで、あろうことか、わざわざに駅を下りて歩いてその家をさがしてピンポイントで突きとめたのですな。ストーカーですよ。
しかし出版が1997年となりますと、このストーカー行為も。ちがうのかも。
それがたまたま、同年代の女性であった。しかも一人住まい。
ここからドラマがはじまります。

小説はあくまでフィクション。田辺聖子先生は、大胆な行動をすることで人生の転機が訪れることを知っており、それを物語の中では男女の出逢いとして描いたのです。
これだけ大胆な行動するにしても、塚田という男性はさらりとやってのけるのです。さわやかな風のように吹き抜けていくのです。
小説にはそのような表現がありませんが、全体の感じからですが、さらりとした感じで、ねっとりとかはありません。60代、アラシックスのなせる業でしょうか。読者が考えさせられるところです。
ふたりがレストランへ行って周りを見ると、みんながしゃべっている。その光景を見て、人間は基本的にしゃべることを欲しているという悟りに似た感覚を表現しています。ここでそのまま書き出すのは、田辺先生のご許可が必要かと思いますので、書けません。残念。
ぜひ、Amazonなんかでご覧いただきたいものです。
しかし、そんなうまいこといくものか、そんな良いことばかりないよ、とおっしゃる方もおられるでしょう。もちろんこれはフィクションなのですから、作者の思うように登場人物を動かしていきます。
私たちも、できれば自分の人生の作者になって、自分の人生の構築を自分でやって、よりよい未来につなげていければいいですね。
そんなことを思いながら、主人公のさらりとした大胆な行動がツキを呼び込むことがあるのだという、そんなお話であろうと思います。